
李逵や魯智深、武松たちが、むきだしの感情そのままに、前へ前へと突き進んでいくのに対し、林冲は幾度も後ろをふりかえります。友に裏切られ、官を追われ、愛するひとを失い、彼の心は降りしきる雪のように冷たく、北風のように寂しく、冬の黄昏(たそがれ)、豹子頭林冲は緑林の別天地、梁山泊へと消えてゆきました。
『豹子頭 林冲(ひょうしとう りんちゅう)』
絵巻水滸伝(第1巻)
絵と文★正子公也
*『絵詞』は1996年に描いた水滸伝人物画約20点に添えられた、正子公也の文章を当時のまま、掲載しました。(初出;光栄刊「水滸伝」好漢ファイル)