2021年 01月 23日
『絵巻水滸伝』の好漢二世たちの名前は、『水滸後伝』に準拠しています。 水滸伝のその後を描いたこの物語は、なつかしい好漢たちが続々と登場したり、北宋の滅亡があったりと、前半はとても面白いですね。 水滸伝好きなら大抵は読んでいる──ということで、人口に膾炙した名前を採用しました。 しかし、なぜか一人だけ、違う子供が誕生しました。 この子の名前は、当初から二転三転し、結局は呼延灼の宿星である「威」となりました。 『鈺』という字が、出ないからということもあるのですが……。 ならば幼名を読みが同じ『玉』にして、花望春のように途中で字を変えるという方法もあります。 そうしなかったのは、自分でも理由がはっきりしないのですが、「呼延灼の息子は死ぬだろう」という予感があったからです。 彼は、曽頭市の住民の代表として、“なんとなく”登場しました。 名前の由来は、父親が金魚売りだったという、かなりテキトウな理由です。 出番も、それきりだろうと思っていたら、なぜか、招安篇にも登場することになりました。 彼はどうやら、作者も知らないあいだに、梁山泊を目指していたようです。 その後も、だんだんモブになるだろう……と思っていたのですが、水軍に入れても馴染まないし、関勝につけても飛び出すし、文字通り小魚のように、ちょろちょろと勝手に動き回って、いつの間にか呼延灼の配下になってしまいました。 絵巻には何人かオリジナルの人物が登場しますが、基本的にはやがては退場していきます。 仲間だった小狗も、杓児も退場しました。 それなのに、なぜ、この子はいつまでも残っているのだろうと、正直、ちょっと困っていたのです。 小魚は、ついに方臘戦にまで従軍することになりました。 呼延威は方臘戦で死ぬ運命です。 その頃には、小魚が呼延灼の養子になるという考えが浮かんでいましたが、同時に、それはちょっと都合がよすぎるのではないか、とも迷っていました。 そうしたら、これは本当に偶然だし、それまで調べなかったのが迂闊なのですが、「魚」と「鈺」の発音は、日本語では「ぎょ」「ぎょく」と違いますが、中国語ではどちらも「YU」なのでした。 呼延灼は小魚のもとの名前を読みで残しつつ、「鋼のように強い玉(=魚)」という新しい名前を与えたわけです。 ああ、これは初めから決まっていたことなんだな──と、ついに納得した次第です。 なんとなく書いたことが、後で意味をもってくる──絵巻には、そういう巡り合わせが何度もありました。 そんな時は、“あるべき形”になるように、なにかに導かれているような気さえします。 それこそが、自分にとっては“絵巻水滸伝最大の謎”なのです。 (森下翠) 被害に遇われた皆さまに、心よりお見舞い申しあげます。被災地の復興をお祈り致します。
by suiko108blog
| 2021-01-23 00:00
| Suiko108 クロニクル
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Comments(2)
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こんばんは。
小魚、すごい出世魚になったなぁと思うておりましたが、 そんな謎が背景に・・・。 小狗、杓児は実は登場時にあ、あの時の子だ。って はっきりわかったのです。しかし小魚はえ。え~と、 もしかして、あの時の? くらいのぼんやりしたもの だったんですよ。でも、お話進むにつれ、 アレ? 意外とこの子好漢に近いレベルまでいくの じゃ?と思い至りました。 これは、絵巻水滸後伝に導かれてるような気がします。 小魚は水軍、歩兵軍、騎兵軍、梁山泊の全てを 身をもって知った子です。 好漢の後継ぎに相応しい漢の表情だと思うのは私だけ でしょうか。
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> 雲海さん
こんにちは! たしかに!彼はすごい“出世魚”になりましたね。魚はハマチだったのか……。 そうそう、歩兵にも入れられたことがありました。すばらしい記憶力、さすがです。 梁山泊に入るまえにも苦労をしているし、あれだけ心身共に鍛えられたら、好漢レベルになっていくのも当然でしょうか。 二世の中では貴重な“叩き上げ”、ほかの子たちとうまくやれるかな……? 顔も登場の時は丸々としていた印象なんですが、本当にシュッとしましたね。大切な人を次々と失ってしまった小魚……これからもガンバレ! |
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