大桿刀(柄の長い刀)の使い手で、あだ名は“白花蛇”。噛まれたら三歩も歩かぬうちに死ぬという、猛毒の蛇の名前である。もとは“神機軍師”朱武らと少華山に塞を構え、官兵も手が出せないほどの勢いだった。陳達が“九紋竜”史進に捕らえられると、助命のため朱武とともに山を下りて駆けつけた。史進を救出した華州戦の後、少華山をたたんで梁山泊入りし、戦闘では陳達と共に史進の副将につくことが多かった。それは、彼のひそやかな人生の最期まで、変わらなかった。
楊春は、懐に二匹の毒蛇“白公子”と“白公主”を飼っていた。ひそやかな蛇は、その牙に猛毒を隠している。“隠”とは、隠れること、隠されたもの。目にははっきり見えねども、確かにそこに寄り添うもの──智の朱武、勇の陳達の陰に楊春いてこそ、少華山の均衡は保たれていたのだ。