人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2020年 03月 12日
森下翠の“水滸伝の謎”
『兄弟順の謎』
森下翠の“水滸伝の謎”_b0145843_00091454.jpg
『水滸伝』を読んだ人間が、一度は考えずにいられないのが、「阮小一、三、四、六は?」ではないだろうか。
答えとしては、二つが考えられる。
まずは、昔のことなので、子だくさんだが、死亡率も高い。
ゆえに、『“一、三、四、六”は生まれはしたが、呉用が生辰綱強奪に誘いに来る時まで生きていなかった』

もうひとつが、“輩行”という中国独自の“兄弟順”だ。
水滸伝以外にも、ドラマや小説などに触れた時、“堂兄““表妹”などという単語を見たことはないだろうか。
これは訳すとどちらも“いとこ”なのだが、『堂』は父方、『表』は母方になる。

この『堂』兄弟に、生まれた順に番号をふったのが“輩行”である。
長男の息子の次に、三男に息子が生まれたら“二“、次が次男の息子だったら、この子が“三”。
そのため、同腹の兄弟でも数字が飛ぶのである。
男児は男児、女児は女児で数え、その世代ごとに共通する文字を名前に用いる。
(同腹の順は、孟・伯=長男、仲=次男~などの文字で表せる)

大家族主義の時代では、一族は同じ敷地に住むことが多かったので、堂兄弟は本当の兄弟としてみなされ、この“長幼の順”は絶対だった。

同様の理由で、表姉妹(姓が違う)とは結婚できるが、堂姉妹(姓が同じ)とは、当然、結婚できない。
幼なじみの初恋の相手として、しばしば“表妹”が登場するのはこのためである。
(方杰と金芝公主は“従堂”(はとこ)になる。彼は、かなりヤバい男なのだ)

石碣村の阮家は、親戚もない落魄した家である。
そのため、『絵巻水滸伝』では先の“夭折説”をとった。

***

※新コーナー、いかがでしたか?
みなさんの知りたい“水滸伝の謎”を募集します!

森下翠の“水滸伝の謎”_b0145843_18581166.jpg
我々は決して負けない!! All Men Are Brothers      梁山泊一同

被害に遇われた皆さまに、心よりお見舞い申しあげます。被災地の復興をお祈り致します。


by suiko108blog | 2020-03-12 00:00 | Suiko108 クロニクル | Comments(4)
Commented by 楊げ林 at 2020-03-12 09:21 x
是非とも私は「一丈青」の意味を知りたいですなあ。
Commented by suiko108blog at 2020-03-12 09:55
> 楊げ林さん
お久しぶりです!みなさん、ちゃんとブログを見続けてくれていて嬉しいです。
さて「一丈青」……これは、錚々たる水滸伝学者のみなさんも結論を出していない「謎あだな」ですよね。
相撲取りの四股名だったり、燕青のあだなだったり……すらりとした“美丈夫”のイメージなのは間違いないところでしょうか。
謎は謎のまま、いろいろと想像してみるのも楽しいですね。
Commented by 雲海 at 2020-03-12 22:40 x
こんばんわ。
阮兄弟の謎非常に興味深く読ませていただきました。
孫二娘も兄ちゃんや姉ちゃんいたのかなぁ、なんて
ぼんやり考えてましたヨ。
一丈青・・・。シンプルかつミステリアスな
あだ名ですよねぇ。でも男女問わずきれいな、
すっきりした人物を想い浮かべますねぇ。
水滸伝の謎といえば・・・原作の作者も謎多き
方たちのようですよねぇ。
雲海さん的には武官のもとの位が
それくらい偉いか、強いが謎です。
都統制とか、提轄とか・・・。
Commented by suiko108blog at 2020-03-13 13:03
> 雲海さん
こんにちは!新コーナー、読んでいただいてありがとうございます。
『水滸伝』は長期間……というより、いくつもの時代に跨がって複雑に成立した物語ですので、歴史的な部分は混乱をきたしています。
地名しかり、官職しかり。時代によって呼び方の違う地名については、絵巻ではどうにか整合性を取っていますが、官職についてはマイルドな扱い……なんとなく雰囲気で!という感じです。
宋代の官職については、いつかまとめるかもしれません。


<< 『第130回「聖者の敵(三)影...      『絵巻水滸伝』Web更新日のお知らせ >>