『絵巻水滸伝 第10巻〜結集百八星 』ハイライト(34)
呂方と郭盛が繰り出す画戟を、董平は両手の槍で次々に受け止めた。その頬には微笑さえ浮かんでいる。
その時、呂方は雅びやかな調べを聞いた。
関々とつれなく雎鳩は 河の洲に
窈窕たる乙女こそ 君子のよき逑れ
(歌っている!!)

董平は左右に呂方、郭盛の画戟を受け流しながら、『詩経』の「関雎」に節をつけて口ずさんでいた。
求めても得られねば 思いの明け暮れ
悠なり 悠なり 夜もすがら寝返りする
呂方は圧倒された。
それは、他ならぬ彼が憧れ続けた“英雄”の姿であった。