『絵巻水滸伝 第10巻〜結集百八星 』ハイライト(33)
“小温侯”呂方は、息を呑んだ。
その眼は、一人の男に釘付けになっていた。
梁山泊軍は『及時雨 宋江』の旗を掲げ、“鉄扇子”宋清を大将に東平府の西門へと攻め寄せた。その数三千。東平府からは二千余の兵を率いて一人の男が現れた。
東平府兵馬都監“風流双槍将”董平である。
華麗な甲冑に身を包み、矢壺には二本の旗を挿していた。
すなわち、『風流双槍将』『英雄万戸侯』。
夕焼けの光を正面から浴び、全身が燦然と輝いている。
「──おお」
梁山泊の将兵たちから感嘆の声が洩れた。
それほど華やかな軍人を、呂方は見たことがなかった。