『絵巻水滸伝 第10巻〜結集百八星 』ハイライト(26)
「オイ、待ちやがれ」
李逵は男の腕を掴んだ。
すると、男はさっと腰をかがめ、両手で李逵に組み付いた。李逵も咄嗟に腕に力を込めたが、四つに組んだと思ったのは、一瞬だった。

男はそのまま後ろに回り込むと、がっちりと李逵の首を掴んだ。あっと思った時にはもう、李逵は頭から仰向けに投げ飛ばされていた。
「へッ、今のは手加減してやったんだ」
李逵は両手に唾をつけると、今度は自分から勢いよく男にぶつかっていった。気がつくと、また地面に転がっていた。何度やっても同じだった。
「まいった!!」
李逵はついに地面に胡座をかいた。
「おめえ、いったい何者だ」
「……しょ、焦、挺」
焦挺、あだ名を“没面目”──“愛想なし”の異名をとる力士である。
(『第69回 天命』より)
『絵巻水滸伝/「第124回 嵐の日、その星は輝き(五)その星の名は」』公開中!(
キノトロープ/絵巻水滸伝)