ふいに李俊の動きが止まった。
その目は、帆に釘付けになっていた。帆の中央には、一匹の怪物が描かれていた。獅子の頭と、龍の体を持つ神聖なる怪物──。

頭が、割れるように痛かった。
目眩が襲い、ぐるぐると視界が回った。
密林から押し寄せる獅子の群れ。死せる龍たち──血に染まる海。
李俊は黄金の龍冠を戴き、剣を手にして、血飛沫の中に佇んでいた。

(これは夢だ!!)

空に雷鳴が轟いた。
“あの日”も、李俊はそう叫びながら、戦い続けた。
李俊──いや、李俊ではなかった。
あの時、彼は“李俊”ではなかった。
一条の雷光が龍のごとく空を切り裂き、船を照らした。
(俺は何者だ!!)