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2015年 01月 08日
『宋江三十六人賛』(25)
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   “立地太歳”阮小五


北宋時代、梁山泊に集まった好漢たちの物語は、はじめから今の「水滸伝」の形をとっていたわけではありません。
『宋江三十六人賛』は、『水滸伝』の誕生に先駆けて、南宋時代(1127~1279)に書かれた宋江ら三十六人の仲間を讃える文章です。
もともとは画がついた“画賛”でしたが、画は散逸して、今では文章だけが残っています。

古文ですし、当時の世相を色濃く反映しているので、訳すのは大変に難しいです。
分からない言葉もたくさんありますが、なんとか頑張って読んでいってみましょう。
南宋時代の梁山泊にはどんなメンバーがいたのか、そして、彼らはどのような人物としてイメージされていたのでしょう。

※訳文はあくまで素人の推測・想像ですので、多少とも合っているのかどうか、まったく分かりません。
皆さんのご意見、識者のご教授をお待ちしています!

   “立地太歳”阮小五

  東家之西(東家の西)

  即西家東(すなわら西家の東)

  汝雖特立(汝、特立すといえども)

  何有吾宮(吾宮はいずこにあり)


「東家の西 すなわら西家の東 汝、特立すといえども 吾宮はいずこにあり」

梁山泊第二十九位の好漢、阮氏三雄の次男坊が兄弟中では最後に登場です。
「特立」は特に優れていること、「東家」は主人や雇い主のことを云います。
今も中国語では大家さんを「房東」と呼びます。麻雀でも、親は「東家」ですね。
昔、主人は敷地にある複数の建物のうち、東の建物に住んでいたからです。しかし、ここでは単純に「東の家」のようです。
阮小五のあだ名は「立地太歳」太歳災いの神です。
「東家之西即西家東」や「西家之東即東家之西」は、太歳の災いを避ける呪文だったようで す。


ということで、suiko108的に超解釈してみると……

「くわばらくわばら、地上に現れた太歳のような阮小五、お前は実際たいした疫病神かもしれないが、いったいどこのお宮に祀られている?」

こんな感じでどうでしょうか。

太歳は、土中にある肉の塊のようなもので、木星と呼応として地中を動くと思われていました。
家を建てる時などにこれを掘り出してしまうと、大変な災いが起こるというので、土木作業の際には木星の方角を避けなければなりませんでした。
ですので、「東の家の西は~」のような方角に関する呪文が生まれたのでしょう。
道教では人格化して太歳星君となり、最凶の祟り神として恐れられます。

“立地太歳”は水滸伝では長兄の阮小二のあだ名ですが、兄弟の中でも一番の乱暴者である阮小五の方があっている気がしますね。
「立地」というのは「たちどころに、すぐに」という意味ですが、文字通り「地に立つ~地上に現れた」ととれば、まさに「たいへんな災いをもたらす 疫病神のような男」です。
万が一、太歳を掘りあててしまったら、すぐに埋め戻さなければ恐ろしいことになると考えられていたのです。
地上に出たら、おしまいです。

そんなに恐れられた男ですが、“お宮に神として祀られているわけでもあるまいに”……と、ちょっと迷惑そうな感じを受ける賛です。
“触らぬ神にたたりなし”と、煙たがられていたのかもしれませんね。

ところで、その太歳ですが、食べると美味しいとか、不老不死になるとかも言われています。
今でも、時々、中国で「太歳発見!?」というニュースがあります。
ツチノコみたいな感じでしょうか。
地中で成長する菌の一種ではないかと考えられているそうです。

ところで、阮兄弟ですが、現行の『水滸伝』では、席次は兄弟順、あだ名は
“立地太歳”阮小二
“短命二郎”阮小五
“活閻羅”阮小七


『三十六人賛』では、
“活閻羅”阮小七
“短命二郎”阮小二
“立地太歳”阮小五


あだなはこちらが原型として、順番は人気の順なのか、大物順なのか……謎が深まりますね。


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  我々は決して負けない!! All Men Are Brothers          梁山泊一同

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by suiko108blog | 2015-01-08 00:00 | Suiko108 クロニクル | Comments(0)


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