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2011年 07月 25日
制作裏話
「喜平次と與六」の原画(タイトル『河誓山盟(かせいさんめい)』)の制作について、正子公也が解説します!
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(……昨日からの続き)


 この銅像は、「平和を願う二人がテーマなので、戦争をイメージするような鎧兜は描かないで欲しい」という史談会様のご要望から、兼続の有名な「“愛”の兜」等の甲冑は一切、描かないことにしました。そこで、喜平次は刀ではなく、「上杉謙信所用戒杖刀・銘国宗(注1)」という仕込み杖を手にしていました。しかしこれは、喜平次の「若さと凛々しさ」が充分に伝わらないため、“刀(注2)”に変更することになりました。

 喜平次の陣羽織は、型は謙信所用の緋羅紗陣羽織(注3)、模様は謙信所用の雲龍模様胴服(注4)を参照しています。何れも、養父謙信からの贈り物という設定です。もともとは赤い緋羅紗陣羽織を着たイメージでしたが、銅像で色を表現することはできないので採用しませんでした。
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修正前の、“戒杖刀”を持つ「赤い陣羽織を着た喜平次」

 与六の刀は、景勝所用「黒蠟色塗鞘打刀(注5)」の鞘を朱色に仕上げてみました。
 二人の顔は僕の想像で描いていますが、眉毛の雰囲気等、残された肖像画を参照しています。
 足下の邪鬼は、以前に僕が描いた「上杉謙信」「上杉景勝」の絵に共通するものです。
 背景の山は、昨年の「兼続公まつり」で南魚沼を訪れた際に撮った八海山です。青空を舞うのは、二羽の白鷺です。
 作品は、人物がメインの絵と、少し引いて背景を入れた絵の2パターンを制作しました。そして更に皆さんのご意見を参考に修正を加え、昨年12月、最終的な原画が仕上がりました。

原画の題「河誓山盟」(かせいさんめい)は、直江兼続が43歳のときに詠んだとされる漢詩「逢恋」(ほうれん)の一節、

共に 河誓 又 山盟を修す(ともに  かせい  また さんめいをしゅうす)

から採りました。この詩はもともと恋の歌ですが、男女を超えて、非常に深く強い信頼関係を表す言葉として、また、魚野川と坂戸山の間に立つ銅像のイメージとして、この作品にふさわしいと思い、絵の題としました。


※注1●上杉謙信所用戒杖刀
(かいじょうとう)
上杉神社蔵。銘は国宗。謙信所用の仕込み杖。高野山で舜学坊清胤に教えを受けた際に携えていた刀と伝えられています。

※注2●上杉謙信所用金梨子地塗鞘合口打刀拵
(きんなしぢ ぬりざや あいくち うちがたな こしらえ)
上杉家伝来。この刀には、鍔がありません。斬り合いでは、鍔がないために持ち手をガードすることが難しいですが、謙信には必要なかったのかも知れませんね。

※注3●緋羅紗陣羽織
(ひらしゃじんばおり)
上杉神社蔵。鮮やかな赤色ですが、銅像ではこうした色を表現することはできません。型も洗練され、美しい。今回は“風”を表現するため、丈を長めに描いています。

※注4●白練緯地雲龍模様胴服
(しろねりぬきぢ うんりゅうもよう どうふく)
上杉神社蔵。白の練緯地に描絵の技法で、表左右に雲模様、背中に雲龍模様が描かれています。

※注5●黒蠟色塗鞘打刀
(くろ ろういろぬりざや うちがたな こしらえ)
上杉家伝来。上杉三十五腰の一。装飾が少なく、質実剛健な造り。



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by suiko108blog | 2011-07-25 00:40 | イベント・グッズ | Comments(0)


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