『絵巻水滸伝 第4巻〜清風鎮謀叛』ハイライト(16)
「こん畜生め!!」
人垣の中から獣のような声が轟いている。
「うすのろめ──へっ、ざまあみろ!!」
どっと人垣が崩れ、戴宗と宋江の前に鼻を折られた男が血を噴きながら落ちてきた。
「よさねえか、鉄牛!!」
戴宗が怒鳴りつけると、あたりがしんと静まり返った。人垣が潮が退くように二つに割れた。

「なんだ、戴の兄貴か」
現れたのは、炭のように黒い肌の大男だった。
分ぼさぼさの髪、伸び放題の髭、服は辛うじて服の形を保っているにすぎない。肩には牛のような筋肉が盛り上り、両手に二丁の板斧を握っていた。
絵巻水滸伝(第4巻)(第三十四回 潯陽江より)