『絵巻水滸伝 第3巻〜血戦鴛鴦楼』ハイライト(9)
金蓮は胸を紅に染め、すぐそばにある男の顔を見上げた。手を伸ばし、武松の顔に触れようとして、そのまま、女の体は床に崩れた。
女の髪から、真紅の百合が滑り落ちる。
武松は女の返り血を浴び、闇の中に佇んでいた。
金蓮は、焦点を失っていく目で、武松を見ていた。
(あたしが、待っていたものは──)
一瞬だけ、金蓮は夢みるような笑みを浮かべた。
「やっと……」
一粒の涙がこぼれ、言葉は途切れた。
虚空へ差し伸べられた白い手は、蝶のようにふわりと落ちた。
絵巻水滸伝(第3巻)(第24回 散華より)
『絵巻水滸伝/第84回「亡霊・前篇」』公開中!(
キノトロープ/絵巻水滸伝)