「──秦明様」
秦明は足を止め、振り向いた。
降り注ぐ月の光が、宝燕の目に戯れていた。夜の風が木立を揺るがせ、二人の間を吹き抜けていく。
宝燕は何か言おうとしたが、そのまま秦明を促すように身を退いた。
秦明は少女の顔を一瞥し、闇の中へ踏み出した。そして、何歩か歩いてから思い出したように立ち止まり、もう一度、振り向いた。
「俺の顔は、そんなに恐いか」
宝燕の瞳がぱっと輝いた。
「ええ、とっても」
そう答えた時、宝燕には秦明が微かに笑ったように思えた。
第三問の答えは
秦明でした!
(「絵巻水滸伝・第4巻・第31回『罠』」)
「絵巻水滸伝」(第二部)連載中!(
キノトロープ/絵巻水滸伝)