★歩兵軍頭領
歩兵は、騎兵が突撃・攪乱した後に敵に当たる戦闘の中核を成す部隊です。敵の城門に攻め寄せたり、城壁によじ登ったりもします。機動力よりも実際的な“強さ”が求められ、その将も、部隊を統率するというよりも、個人的武勇に優れ、そのカリスマ性によって自然と部下に慕われるような好漢が配置されています。馬に乗れないわけではありません。
36★天巧星“浪子”燕青
(てんこうせい ろうし えんせい)
あだ名は“浪子”──「伊達者」もしくは「遊蕩児」。“小乙”(二番目)とも呼ばれる。幼い時に孤児となり、“玉麒麟”盧俊義の屋敷で育てられた。雪のように白い全身に見事な碧色の刺青を施し、歌舞音曲から各地の方言、遊びや花街のしきたりにも通暁している。また武芸にも優れ、弩を取れば百発百中。相撲も天下一の技を持つ。天巧星の名に相応しい、万能の美青年である。
盧俊義が陥れられると、燕青も乞食まで身を落とすが、その忠義が揺らぐことはない。丐幇幇主・許貫忠に助けられた燕青は梁山泊へ救援を要請し、やがて梁山泊軍とともに元宵節に北京を襲い、ついに主人を救い出す。
孤児として自分の出自を知らない燕青は、華やかな世界で生きる一方、心に虚無を抱えた若者である。しかし、梁山泊の一員となった燕青は次第に盧俊義の影から開放され、独立した個人として生きはじめる。
聡明な燕青は臨機応変の対応が必要な難しい仕事に選ばれることが多く、若年ながら梁山泊でも頼りにされる存在である。なお“浪子”とは、奇しくも時の皇帝・徽宗の即位前のあた名でもある。彼もまた花柳界に出入りし、浮名を流していたのである。